初めての海外旅行で帰国手段を失った私 そして予想外の結末【後編】

コラム

この記事は2回連載の後編です。前編はこちら

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小六さんの極秘指令

翌朝、ホテルのレストランに朝食を食べに行くと既に小六さんと森さんが食事を取っていました。

小六さんに挨拶すると、小六さんから極秘指令が伝えられます。

「いい、今日は朝食を食べ終えたらすぐにホテルを出発するわよ。」

「昨日、あれだけのオーバーブッキングが発生したのに、今日の便に乗客をすべて振り替えられたはずがない」

「だから他の人よりも早く行かないと、席が無くなってしまうかもしれないわ」

確かに昨日、一週間先まで満席といわれたのに、翌日の便に振り替えられたことを不思議に思っていました。

小六さんの言う通りかも知れません。

小六さんがいなければ、危うく遅くに空港に行って、またまたオーバーブッキングになっていたかも知れません。

急いで、朝食を食べます。ところがここで私の悪い癖が出てしまいました。

食い溜めです・・・

私は今まで貧乏旅行だったので、こんな豪華な朝食は初めてです。

私は、胃袋がいっぱいになるまで食べまくってしまいました。

お腹がいっぱいになっても食い溜めは終わりません。胃袋が埋まれば他の袋(コートのポケット)に詰め込みます。

名づけて、ハムスター作戦

機内食よりも明らかにこのホテルの朝食の方が美味しいに決まっています。

おいしそうなクッキーやマフィンをナプキンに包んでポケットにポイと入れます。

小袋のスナック菓子を発見したので、それもシャツの裾から服の中へ。

甘いものばかり食べると、しょっぱい物も欲しくなるかもしれません。この辺はぬかりがありません。

食事を終えると、急いで部屋に戻り荷物を持ってロビーに向かいました。

しかし食べすぎでちょっと気持ちが悪い・・・

ロビーには既に皆集まっていました。バスの時間がまだなので、しばらくロビーで休もうかという話をしたのですが、小六さんが

「バスを待っていたら空港に着くのが遅くなる」

「他の乗客より早く空港に行くために、タクシーを使いましょう」

と言ってタクシーを手配してくれました。

ロンドンでタクシーといえば、あの黒くてレトロなロンドン名物「ブラック・キャブ」

Image by Mark Hemmings from Pixabay

一度、あのタクシーに乗ってみたかった!!

思いがけずブラック・キャブに乗れることになって大喜び。

ところがやってきたのは、普通の緑のミニバンでした・・・

5人+5人分の荷物だと定員オーバーだったみたいです・・・

しかしタクシーは早くて快適。タクシーのおかげで私達は出発の3時間前に空港に到着しました。

空港に着くとすぐさまチェックインカウンターに並びます。

一列に並び、カウンターの前までたどり着くと、 それぞれ空いたカウンターに進みます。

そして私達も、列の先頭までくるとそれぞれ別のカウンターに進みました。そしてこのカウンターが5人の明暗を分けました。

私の番で回って来たカウンターは、女性の係員が受け付けでした。

私がチケットを手渡すと、しばらくチェックした後に何点か質問されました。

「保安上の質問をいたします。荷物はすべてお客様ご自身でカバンに仕舞われましたか?」

「はい」と答えます。

「誰かから、預かった荷物はお持ちでないですか?」

「いいえ、預かった荷物はありません」

「しばらくお待ちください」

どうやら麻薬などの運び屋にされていないかのチェックだったようです。

特に問題なくチェックを終えたと思っていました・・・

荷物の確認を終えたのに、まだ発券してくれません。

それどころか係員は上司と思われる方を呼び出して何かを相談しています。

さっきから、2人の視線が異常に膨らんだ私のコートのポケットに・・・

まさか・・・持ち物チェック!?

こんな大勢の人がいる前で、ポケットの中身を広げるなんて・・・

ゲッ、しかも中身はクッキー!!

「麻薬・・・持っていませんよ・・・」

ニコっと笑顔をつくり必死に不審者イメージの払拭に努めると、受付のお姉さんも微笑み返し。

でも、でもすぐに上司とヒソヒソ会話を始め、搭乗券を発券してくれません。

一体なんの時間稼ぎだ!!

すると係員は、突然どこかに電話をし始めました。

そして電話で何か話した後に、突然私に受話器を渡してきました

訳が分からず恐怖に慄きながら電話に出る私、すると・・・

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運命の電話

「ヒースロー空港の通訳でございます」

「お客様にお伝えしたいことがございます」

「お客様の座席を、ビジネスクラスにアップグレードさせていただきました。」

?!

「えっ!! ビジネスクラス!?」

そうなんです!

昨日の混乱のお詫びということなのでしょうか。私の座席はビジネスクラスにアップグレードされたのです!!

ブリティッシュエアウェイは

  • エコノミー
  • プレミアムエコノミー
  • ビジネスクラス
  • ファーストクラス

の4クラス制なので大出世です。

なんということでしょう。 こんな信じられないサプライズが訪れるとは!

「あっ・・・ありがとうございます!!」

舞い上がりながらもチェックインを無事に終えると、小六さんと森さんがニコニコしながら立っていました。2人のもとへ行くと、

「ちょっと、ちょっと~どうしましょう~」

「あんまり大きな声では言えないんだけど」

「私たち何と!! ビジネスクラスにアップグレードされちゃったわよ!!

アップグレードに驚き興奮する小六さんと森さん。

「実は私もビジネスクラスなんですよ!!」

とすかさず報告するとさらにビックリしていました。

お互いにビジネスクラスの喜びを分かち合う3人。

その後、関口君がやったきました。彼もニコニコ顔です。

そして私達に自慢げに「プレミアムエコノミーにアップグレードされました」と報告。

・・・勝った!!

最後にやってきた村上さんもニコニコしています。

今回大活躍の彼女の席はビジネスでしょうか?それともプレミアムエコノミーか?

「村上さん、席はどうでした??」と聞くと・・・

機体後方、通路側の席

「えっ・・・まさかのエコノミー!?」

しまった。またこの私の口がろくでもないことを・・・

さんざんお世話になった村上さんはエコノミー。そして私の手にはビジネスのチケット。

・・・気まずい

みんなのアップグレードを知った村上さんはご立腹!!

ブリティッシュエアウェイの本拠地ヒースロー空港のど真ん中で

「もう二度とブリティッシュエアウェイにだけは乗らない」と叫んでいました。

そして天国と地獄に分かれた私達は、出発の時間を待ちます。

ふと「ビジネスクラスだからラウンジも使えるのかな・・・」と呟くと

隣りの小六さんが、「そうよ、ラウンジ使えるわよ!!はすいさん行くわよ」と言い出しました。

私が「アップグレードの身なのにラウンジに行くのは気が引ける・・・」と気後れしていると、小六さんが

「社会人になったら、一流のサービスを受ける機会が増えるの。でも、そういうサービスに慣れてない人は、その時にどう振舞えばいいのか分からなくて恥をかくのよ」

そして私をラウンジに引っ張っていきます。

ラウンジで一流のサービスにふさわしい振る舞いを覚えなさい!!

ところが、バックパッカーの私。ラウンジであっけなく入場を断られてしまいます

それでも小六さんの指導は続きます。

ラウンジがダメなら一流のお店。小六さんに連れられてロンドンっ子の間で流行っているというショップをハシゴし、あれこれ薦められました。

が、どれも一流! 値段も一流!

とても私の残金では購入できません。

小六さんはお金がないのだったら私が買ってあげる!!という勢いだったのですが、丁重にお断りしました。

私は小六さんを見て、「きっと、こういう奥さんが旦那様を出世させるんだな」と思いました。

このパワフルな小六さんは今でも尊敬しています。

この小六さんの”一流レッスン”であっという間に出発時間になり、いよいよ飛行機に乗り込むことになりました。

機内に乗り込み自分の席に着くと、まず座席に驚かされます。

クラブ・ワールド(Club World)

フルフラットシート!!

ボタンひとつで、イスがベッドになります。

すごい!!、寝ながら移動できる!!

しかも、寝ながらあっちこっちに手を伸ばすと、テレビやヘッドホン、読書灯、受話器があるので、ごろごろしながらいろいろ出来ます。

究極の怠け者シート!!

イスの上には、アメニティーグッズから化粧品までプレゼントがたくさんありました。

アイマスクは行きにエコノミーでも貰いましたが、ビジネスクラスのそれは明らかに質が違います。

アメニティーにまでこんなにグレードの差がでるなんて・・・

そして、クラスの違いはサービスにも大きく表れていました。

「はすい様、本日はブリティッシュエアウェイにご搭乗くださいましてありがとうございます。」

名前で呼ばれる!?

「ウエルカムドリンクをご用意いたしますが何がよろしいでしょうか?」

ウエルカムドリンクって何??

「新聞は、朝日新聞と日経新聞どちらになさいますか?」

日本の新聞!?

ここまで違うと、実はビジネスクラスのトイレも陶器製だったりして・・・

ドキドキしながらトイレに行ってみましたが、そこは普通の飛行機のトイレでした。残念。

しかし食後でもトイレが空いていて「エコノミー名物 トイレ待ち行列」なんてありませんでした。

同じ飛行機の中にこんなにも違う世界があったなんて・・・

だからビジネスクラスと、エコノミーの境目はカーテンで区切られていたのか・・・

”ワンランク上の贅沢を”
なんて宣伝していますが、ワンランクどころではなく天地ほどの差があるではないか・・・

そのさらに上を行くファーストクラスとはどんな世界なのか・・・

想像しただけでも恐ろしい。

飛行機が離陸してから2時間後、一番気になる食事が始まりました。

メニューを見ると、なんとコース料理です。

料理が温かくておいしい!! しかも順番に運ばれてくる!!

しかし、そんな料理も一皿目から箸が止まりました。

それもそのはず、ホテルでの食い溜めの影響で、まだ全然お腹が空いていません。

それでも、もったいないので頑張って食べます。

一皿平らげると、すばやく次の料理が出てきます。さすがビジネスクラス、サービスの質が高い!!

しかし、そんなサービスも今の私にとっては”地獄のわんこそば”

はいっ 前菜!!

はいっ パン!!

はいっ スープ!!

はいっ マトンのカレー!!  (うっ カレーはキツイ・・・しかも羊肉)

はいっ 3種のケーキ!!  (別腹に入るか・・・)

はいっ ワインとチーズの盛り合わせ!! (ギブアップ・・・)

12時間のフライトで2回の食事。

もう限界です・・・

食事を終えてからはずっと食べ過ぎの苦しみとの戦い。

胃が破裂しそう・・・もう食べ物は見たくない・・・

しかし、私のコートの異様に膨らんだポケットからは悪魔のようなクッキーの香りが漂っていました。

飛行機が日本の上空に到達し、天国だったのか地獄だったのか分からない日本への旅が終わりに近づいたころ、消化が進んだためか不意に眠りについていました。

次に意識を取り戻したとは、”ドン”という着陸の衝撃。

程なくして、ゴォォォォォォォーという耳をつんざくようなスラストリバーサーのごう音。

窓の外には、成田空港の管制塔が見えました。

終わり

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